
2019年1月、福岡県。保健福祉事務所の職員は動揺していた。目の前には、生活保護を申請したシングルマザーがいる。生活保護費を支給する場で職員が気になったのは彼女ではなく、その隣にいる、ゆうに100kgは超えている巨体を窮屈そうに椅子に収める第三者の存在だ。生活保護の受給には、かなりプライベートな質問を要するため、通常は第三者を同席させることはない。 「ちょっと、席を外してもらえますか」 職員が慮ってそう言うと、首を横に振ったのは、シングルマザーの方だった。 「どうしても一緒にいてほしいんです」 職員はそれ以上、その女について何も言うことができなかった。福祉事務所に来る前、シングルマザーとその女は入念に打ち合わせを重ねている。 「生活保護は絶対に現金で支給してもらうこと。そうしないと、借金相手に通帳を見せなければならなくなったとき、お金があることがバレてしまうから」 打ち合わせといっても、女からの一方的な入れ知恵だ。書類を前にしたシングルマザーは、女に言われたとおりに、話を進める。女は一言も口を挟まない。シングルマザーに給付される約20万円の生活保護費を何に使おうか──そんなことを夢想していたのかもしれない。 昨年4月、5才だった翔士郎ちゃんに充分な食事を与えずに餓死させた疑いで、母親の碇利恵容疑者(39才)と知人の赤堀恵美子容疑者(48才)が、保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕されたのは3月2日のこと。2人は、福岡県篠栗町にある同じ幼稚園に子供を通わせる保護者として5年前に出会った。 しばらくすると赤堀容疑者は、「ママ友がLINEグループで悪口を言っている」と碇容疑者に吹き込み、自分だけが味方であると強調し始めた。洗脳の第一歩だ。その後、赤堀容疑者は、共通のママ友を《暴力団とつながりのあるボス》に仕立て上げ、その存在をちらつかせることで主従関係を作り上げていく。
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