Search

赤信号ともった通天閣「ついにこの時が…」 医療関係者「限界に近づいている」 - 毎日新聞 - 毎日新聞

大阪府民に不要不急の外出を控えるよう呼びかける吉村洋文知事=大阪市中央区で2020年12月3日午後7時47分、山崎一輝撮影

 大阪府の新型コロナウイルスの独自基準「大阪モデル」は3日、非常事態の「赤信号」とされた。大阪市の北区と中央区で11月27日から飲食店などの営業時間短縮要請が出され、警戒感は広まっていたが、大阪の街は新たな局面を迎えた。

大阪府の独自基準「大阪モデル」が「赤信号」となり、赤色にライトアップされた通天閣=大阪市浪速区で2020年12月3日午後8時15分、本社ヘリから山田尚弘撮影

 「ついにこの時が来てしまった」。大阪有数の観光名所・新世界(大阪市浪速区)に建つ通天閣。府の依頼で午後8時に赤くライトアップされ、運営会社「通天閣観光」の高井隆光社長(46)は断腸の思いを語った。

 赤色になれば周辺の客足が一層落ち込むと、近隣店主らから点灯させないよう求める声もあった。だが、医療崩壊が懸念される事態に、点灯を決めたという。

恒例「えとの引き継ぎ式」中止

 「地域の経済を犠牲にして協力する。一人一人が予防を徹底し、これ以上の感染が拡大しないようにしてほしい」。28日に予定していた年末恒例の「えとの引き継ぎ式」も中止と決めた。

 北・中央区の時短営業要請は期限が当初の11日から15日に延長された。北区の飲食店の男性店長(42)は時短要請で平日の売り上げが以前の2割に落ち込んだと嘆く。外出自粛要請で客入りはさらに減り、「(行政からの)協力金が追加されてもやっていけない。急に期間を延長するなんて不誠実だ」と憤った。

 外出自粛要請には両区以外の飲食店からも懸念の声が上がる。阿倍野区の居酒屋「美吉野(みよしの)」の店主、江村勉(つとむ)さん(55)は「北・中央区での時短の影響が波及して売り上げは前年の半分以下になったが、ますます客が減るだろう。この周辺は家賃も高く、コロナの終息が見通せなければ一帯の店が壊滅してしまうのでは」と頭を抱える。

 サラリーマンにも戸惑いは広がる。東淀川区の男性(36)は勤務する市内の金融関連会社から3日夕、赤信号でテレワークを推奨する連絡を受けた。「4日も大事な商談がある。つい最近まで『GoTo』で外出は勧められていたのに……」と首をかしげる。大阪府吹田市の会社員、山村義之さん(46)は「通勤中の電車やバスでは他の人との距離をとり、休日も外出は極力控える」と家路を急いだ。

府立学校は通常通り

大阪府新型コロナウイルス対策本部会議で発言する吉村洋文知事=大阪市中央区で2020年12月3日午後6時20分、山崎一輝撮影

 一方、教育現場への影響は抑えられた。府立学校は分散登校や短縮授業とされ、通常40人までの教室の人数を20~15人程度に絞る方針だったが、通常授業のままに改められた。府教委は「子供たちの健康に深刻な影響があるとの報告はなく、学校でクラスター(感染者集団)が多発している状況ではない」と説明する。

 府立天王寺高(大阪市阿倍野区)の吉岡宏校長は「春先の一斉休校で大きな影響を受けた。特に3年生は学校生活の最終盤で大学入試も控え、授業継続はありがたい」と受け止める。「行事などの制限は出てくるだろうが、感染対策に努め、できる限りのことをしていく」と気を引き締めた。

 府立北野高(同市淀川区)の萩原英治校長は「世の中の不安が高まり、生徒たちに心理的な影響が出る恐れもある。コロナに負けるな、前を向いて頑張っていこうと呼びかけたい」と語った。【隈元悠太、園部仁史、野口由紀】

重症用病床使用率、8日に70%超え想定

 新型コロナウイルスの感染者が急増し、「第3波」に完全に突入した段階でようやく出された大阪モデルの「赤信号」。追い詰められた医療現場からは「もっと早く対策を打ってほしかった」などと切実な声が相次いだ。また、医療の専門家は、緊急事態宣言が出された今春に匹敵するほどの危機感が必要と指摘し、徹底した感染拡大防止策の実施を求めた。

 「医療体制を守る、命を守るということを第一に、府民の皆さんへのお願い事項をここで判断していきたい」。3日夕、緊急で開かれた大阪府の対策本部会議で、吉村洋文知事はこう強調した。

 会議で府は感染の新たなシミュレーションを公表。新規感染者数は、大阪市北区と中央区の飲食店に休業・時短要請をしてから2週間となる12月11日以降、減少傾向となるが、重症用病床使用率は8日に70%(144床)を超え、年が明けても100床以上が埋まるという厳しい想定となった。また、60代以上の感染者の割合が約3割と高く、重症者や死者の増加につながっているとし、対策が「待ったなし」の状況であることを確認した。

 会議では、府の専門家会議委員の意見も資料として示され、議論に反映された。座長の朝野(ともの)和典・大阪大教授(感染制御学)は「(赤信号点灯は)重い決断だが、レッドステージ(非常事態)に相当する」とした。倭(やまと)正也・りんくう総合医療センター感染症センター長は「医療体制は相当逼迫(ひっぱく)している。時間的猶予はない」。茂松茂人・府医師会長は15日までとする自粛要請期間に対し「短すぎるような気がする。経過観察して期間を設定してもよいのではないか」と注文した。

大阪府新型コロナウイルス対策本部会議で、タブレット端末に目を落とす吉村洋文知事=大阪市中央区で2020年12月3日午後6時52分、山崎一輝撮影

独自モデル設計の甘さに批判

 府は11月18日に「12月上旬には患者が目標病床数を大きく上回る」との最悪の想定を示していたが、感染状況はその「最悪」に迫る経過をたどった。

 「病床が空いてもすぐに埋まり、医療体制やスタッフの負担も限界に近づいている」。重症者も受け入れている大阪市立総合医療センターの白野倫徳医長は訴える。11月初めから重症者が増え始めた。「赤信号をともしても、患者が減るには3週間くらいはかかる。もっと早く対策を打ってほしかった」

 センターでは、医師や看護師をコロナ対応にあてるため、がんなどで闘病している15歳から30代までの「AYA世代」と呼ばれる患者の病棟を一時閉鎖している。白野医長は「小児の重症患者などにとっては最後のとりででもあるが、影響が及んでしまっている」と説明。今後、さらに状況が悪化することを想定し「コロナ以外のベッドを減らしたり、手術を先延ばししたりせざるをえない」と述べた。

 新型コロナの検査を受けられる「診療・検査医療機関」に指定されている安田クリニック(大阪府岸和田市)の安田雅章院長(56)は「冬場にコロナ患者が増えることは分かっていた。せめて11月下旬の3連休前に赤信号が出ていれば……。発熱患者を1日に2、3人診察することもあり、増え続けると地域医療を支える医療関係者の負担も増す」と訴える。

 府の対応について、吉田耕一郎・近畿大教授(感染症学)は「重症用病床の使用率が70%近くになってから赤信号を出すのでは、完全に遅すぎる」と大阪モデルの設計の甘さを批判。GoToキャンペーンなどの政策が行われる中で患者が増加した点に触れ、「(黄信号でも事実上は)青信号だと思っていた府民は多いはずだ。急に赤信号と言われて対策できるのか」と疑問を呈す。

 また「クラスター(感染者集団)が発生したり、外来を閉じたりしている病院もある」と医療崩壊の兆候に言及し、「緊急事態宣言が出た春先のような危機感をみんなが持ち、行政も強力なメッセージを出すべきだ」と述べ、京阪神での移動制限の必要性も主張した。【近藤諭、松本光樹】

Let's block ads! (Why?)


からの記事と詳細
https://ift.tt/3lCnJUH
日本

Bagikan Berita Ini

0 Response to "赤信号ともった通天閣「ついにこの時が…」 医療関係者「限界に近づいている」 - 毎日新聞 - 毎日新聞"

コメントを投稿

Powered by Blogger.